表示されるのは、夏の日付と…彼女の番号。
消えないようにと、電話が鳴るたびに…ほかの名前を削除してきた。
聖は、発信ボタンを見つめ、そこに指を伸ばしていく。
しかし、押す勇気が…出てこない。
聖は、携帯から目を離し…唇を噛む。
緩い波の音が、複雑な胸の中で溶けていく。
頭の中で渦巻くのは…1つの観念。
「…もうえーわ」
聖は、何かを吹っ切るかのように、ムクッと立ち上がる。
「アホらしなってきた…」
そうつぶやいて、足早に…旅館へと歩いていく。
…もうええ。