その言葉で、聖は輝雄から聞いた話を思い出す。
『明日も早いし…切るわ』
落ち込む拓馬は、疲れ切った様子で電話を切ろうとした。
「あぁ、すまんな。…あとひとつな、言い忘れてたんやけど」
一か八かの賭け…。
「その浮気相手な、責任から逃げてるらしいわ」
聖は、この台詞にすべてを託した。
その瞬間に、受話器の向こうの空気が一変する。
何も言わない拓馬の表情が、目に浮かんでくる。
大切な女は、大事にされていない。
「じゃあな、おやすみ」