何もかも捨てて、自由になれたら…。


「聖っ! 悪いけど、買い出しに行ってくれへんか?」
厨房の裏にある石段に腰掛け、体を休める聖に、フロント係が声をかけてくる。
聖は、手元にあるジュースを一気に飲み干して、重たい体をゆっくりと動かした。
…白浜に来てから、1カ月が経った。
季節はもう夏で、忙しさはピークに達している。
「…暑っ」
聖は、白いTシャツの袖を肩までまくり、空を見上げた。