「あ、の……まだ記憶は戻らないけど、その、事故に遭う前と同じように、接してほしいの」 「いや……だけど、それは」 「その方が、何か思い出すかもしれないし……それに、あなたが」 そこまで言って、咄嗟に口を閉じた。 これを最後まで言うのは、彼に対してあまりにも失礼だと思ったのだ。 ――あなたが、辛いでしょう? 一ヶ月前、私が目を覚ました瞬間に、彼は私の名前を呼んでくれた。 聞き慣れない名前ではあったけれど、きっと、事故に遭ってからその時まで、付きっきりだったんじゃないかと思う。