「……ずるいな」 「え?」 夢の中の、記憶を無くしていない自分に、嫉妬した。 きっと私は、彼のことが大好きなのだ。 なのに、彼を大好きな私を、私は覚えていない。 そう思うと、泣きたくなった。 私は事故の前から、泣き虫だったんだろうか。 「どうしたの?」 「なんか、悔しく、なって……」 「ユリ、」 涙を流す私に、彼は、穏やかな目を向けた。しょうがないな、と苦笑するような目を。 あぁ、私、前から泣き虫だったんだな、と、思う。