「はい」
自分の部屋に入り、いつもより低い声で電話に出た。
『…幹、あたし。帰りしな考えてて…、ちょっとあたし…無神経やったかなって思って。謝りたいねん』
受話器の向こうにいる美衣子は暗い雰囲気で、話しかけてくる。
『…ごめん』
電話では聞き取れないくらいの…小さな声。
幹は、胸が苦しくなった。
「…あたしも、美衣子がうらやましくて…八つ当たりした。…ごめんな」
自分の心の小ささが恥ずかしかった。
『…ううん。それだけ、あたしに自分を出してくれてるってことやん。それやのに…理解してあげれんかった』
そのとき、幹は彼女の大人なモノの考え方を、心から尊敬した。
「…ごめん」
目尻から、涙があふれ出てくる。