和貴はショックを隠しきれず、黙り込んだ。
『…その好きな人ってさ もしかして』
彼女の気持ちに気づき始めていた和貴は、言葉を詰まらせながらも、確認しようとする。
幹は沈黙を流した。
『あ、何でもない。…うん、わかった。…じゃ…また学校で』
気まずい空気に耐えられず、和貴は返事を聞かずに電話を切った。
電話の後も、幹は受話器を置けずにいた。
…認めてしまった拓馬への気持ち。
幹はそのまま発信ボタンを押し、…かけ慣れた番号を、鼓動の速さとは正反対に、ゆっくりと確実に押していく。