…涙は出ない。
でも、喉の奥で…何かが詰まっている。
…嫌や。
一方、受話器を置いた黒い電話機を眺め、和貴は、唇を強くかんでいた。
「…性格悪いな、俺」
なんで…あんなこと言うたんや、俺は。
深いため息で、胸が苦しくなる。
…彼女を好きになってから、俺は意地悪になっていく。
本当は…こんなこと言いたくないのに、彼女が一番言われたくないことを簡単に口にしてしまう。
…彼女は悲しむのに、俺はアイツの告白を喜んでる。
…一番最低なんは…俺やんか。