太陽と月(第3章まで公開)

「雪…」
「大丈夫!!」
幹は、薄く伝わってくるつらい気持ちに呼びかけようとした。
だが、彼女は明るく…その声をもみ消していく。
「…大丈夫やで。あたしは…ほら…うん」
無理に笑おうとする雪奈の目に、うっすらと涙が膜をはっていく。
「…雪奈」
小さな涙を見て、幹の胸は苦しくなった。
「…平気」
濡れた一粒の涙が、頬に一本の筋を描いていく。
「もー…平気」
彼女は何度もその言葉を繰り返し、愛想笑いを続けた。