幹は、歯を食いしばった。
「あのさっ!」
突然、大きな声で呼び止める彼。
幹は、立ち止まり…振り返った。
「太田…元気?」
引きつった顔を見せる彼に、幹は少し口を開けた。
「…いや、あの」
拓馬は、うまく言いだせない自分に困り果てて、顔を伏せる。
幹は、彼の姿を黙って見つめていた。
「…ごめん、何でもない」
あの夏休みの日から…ずっと心残りだった数日間。
…太田のことを思うと、今日はどうしても…武内を誘うことができなかった。