うなずくこともできない、声を出すことさえも困難。
…でも、涙は…素直に彼女の頬をぬらしていくのだった。

「なんか…今日はごめんな」
いつのまにか紅く変わり始めた空に気づき、2人はベンチを離れた。
「…ううん」
幹は、目を合わさずに、首を横に振る。
「じゃあ、また…」
その言葉に沿うかのように、幹は彼に背を向けた。
…拓馬は、ポツリポツリと歩きだす彼女を、静かに見送っている。
泣きやんだはずなのに…また涙が込み上げてくる。