目の前には、ヌイグルミを両手いっぱいに抱えたカップルが…楽しそうに歩いている。
彼はアイスを持つ手をヒザの上に置き、ため息をついた。
「…俺、やっぱ邪魔やったでな?」
申し訳なさそうな表情で、幹を見る。
「…邪魔とかじゃないよ」
…そう、邪魔じゃない。
自分にとっては、逆に…うれしい時間。
でも、あの子からしたら…あたしは無神経な態度を取ってたに違いない。
幹は、舞い上がった気持ちを隠すことさえ忘れていた。
「…放課後、いつも木村さん…廊下で太田のこと待ってるやん? …アイツ、毎日5時間目くらいから…ソワソワしだすねん」