「・・・なんやおまえか。アイツはまだ帰ってないで」


毎回、憎たらしい口調で対応する彼。


「じゃあ外で待つわ」


舞はムッとした顔で、部屋には入らず・・・ドアの前に座り込んだ。


「暑苦しいねん、おまえ。はよ入れや」


うっとうしそうな顔でそうつぶやくと、彼は部屋に戻っていった。


「・・・おじゃまします」


舞は、気まずいながらも靴を脱いで、恐る恐る部屋に上がっていった。

ソファに座り、カグの様子をうかがう。

・・・彼は、舞に背中を向けて、黙々と爪を切っている。

シーンと静まり返ったリビングでは、爪を切る“カチッカチッ”という音だけが、時計の秒針のように響くだけ。