いかにも“あんたを連れて行くぞ”と言わんばかりに、期待の視線を舞に向ける雪奈。


「あかんって、舞は…」


失恋したばかりの舞を気遣い、止めに入る美衣子。


「なんで? 男とは別れたんやろ? 失恋いやすには次の恋やって!」


何も知らない雪奈の言葉に、2人は黙り込んだ。


「…そやな。行くわ」


失恋をいやすには次の恋。

…カグを忘れるにはほかの人を見なきゃ。

雪奈の何気ない言葉は舞の気持ちを大きく変えていく。


「よっしゃ! じゃあ次の日曜日あけといてな。早速連絡せなっ」


そう言って、携帯を手に嬉しそうに立ち去る雪奈。


「ははっ。台風みたいやな」


舞は陽気にほほ笑んだ。


「…ほんまに行く気? ヤケになりなよ」


不安げにたずねる美衣子。


「…ここままウジウジしてても、前に進まんやん。ヤケとかじゃないから安心して」


必死に前に進もうとする舞に、美衣子はそれ以上何も言えなくなった。