「カグ…あのなっ」


舞は誤解を解きたくて、必死に身を乗り出す。


「眠たない? 俺はリビングで寝るから、ベッド貸したるわ。…もう寝よ。すまんな、眠たいやろ」


彼は勝手に話を終わらせて、寝る用意を始めた。




――真っ暗なカグの部屋。

彼の匂いがただよう布団の中で、舞は涙を流した。


「…そりゃそうやわな。ほかの男に行った時点で…終わってるわな」


舞は小さくつぶやく。

今さら好きと言っても“勇心がダメでカグにした”と、そう取られるに違いない。

…舞は、自分のしてきたことを振り返り、後悔した。

…止まらない涙。

皮肉にも彼の匂いの中で、舞はこの恋に終止符を打つ。

…ほかの人に逃げたりせんと待ってたらよかった。

…そうすれば今頃。

舞は歯を食いしばり、声を押し殺す。

むくわれない想い。どうしようもない結果。

舞は涙を目に浮かべたまま眠りについた。