「行こっか」


ハンドルを手にし勇心は舞に声をかけた。

2人はゆっくりと車を走らせた。

今までオリの中でしか見たことのなかった動物たちが目の前に飛び込んでくる。

アフリカに来たような風景が、2人を包み込む。


「鹿にエサやれるんやって」


勇心が、カップに入れたエサを舞に手渡す。

突っ込むように走り寄ってくる鹿の群れに、舞は驚いて逃げていく。2人は、何もかも忘れて笑い転げていた。

昨日、舞の涙を見た勇心は“キャーキャー”と叫ぶ彼女の笑顔を見、つめ、優しくほほ笑んでいる。