30分程バスに揺られて、海岸沿いの停留所に停まった。
成海さんが先に降りて、俺もそのあとに続く。
「兄ちゃん、頑張れよ。行ってらっしゃい」
出口を出る際、おじさんに一言声をかけられた。
「うん、行ってきます」
振り返って一瞬にっこり笑い、ステップを降りる。
ドアが閉められて、バスはまたロータリーに向かってゆっくりと走り出した。
「瑞樹くん早く早くー!!」
バスを降りてまっすぐ走り出した成海さんが、遠くから俺に向かって叫ぶ。
10m先の笑顔が眩しい。
小走りで彼女に近寄り、隣に並んだ。
「海なんて久しぶりだから、なんだかわくわくしちゃう!
瑞樹くんはここに来たことあるの?」
「うん、昔何度か」
「そうなんだ、いいなぁー」
ここに来れて本当に嬉しいというように、成海さんはにこにこ笑顔。
子供のようにはしゃぐ彼女と海岸沿いの歩道を並んで歩く。
いつもの大人な雰囲気とは違う無邪気な成海さんに、また俺の胸が高鳴りだした。


