「あー…えっと…1番…?」


「そう、正解。できるじゃない」



…わお、適当に答えたら当たった。



実は宿題なんてやっていなかったけど、何とかやり過ごせた。



この先生、宿題を忘れたり授業を真面目に聞いていなかったりする生徒にはかなり厳しいらしい。



もし今の問題を間違えていたら、俺は説教をくらっていたかもしれない…



「瑞樹、セーフだな。
どうせまたあの子のことでも考えていたんだろ?」



隣の席の郁也がこそっと話しかけてきた。



「はは、バレたか」



郁也は唯一、俺があの子に想いを寄せていることを知っている友達。



「今日は話せたか?」


「いや、今日も無理だった」


「ヘタレ」



そう言った郁也は、ふっと笑って前を向き直した。




……ヘタレ…か。



郁也に毎日言われている言葉だけど、こればかりは否定できないな…




…話しかけてみようか。



もう見ているだけじゃ足りない。