…だけど何て話しかければいいんだろう?



そもそも同じバス停に立っているだけの俺なんて、あの子の眼中にあるのか?



…彼女からすればきっと俺なんて、単なる町の住人にすぎないだろう。



だけどやっぱり話したい。



こんなの毎日思うことだけど、その思いは日を追うごとに強くなっている。





…!

くん…!!


「相楽瑞稀くん!!!」


「…ッは、はい!!」



心臓が思いっきり飛び跳ねた。



名前を呼ばれて、途端に現実に引き戻される。



「相楽くん、さっきから呼んでるの聞こえなかったの?」


「あ…はい、すみません…」



知らない間に1限目が始まっていたみたい。



教卓には英語の教師が立っていて、俺の方を向いて何か喋っている。



「98ページの問題、答えられないの?
昨日宿題にしていたはずだけど?」



50歳近くの女教師がそう言って俺に問い詰めてきた。