「アホか。そういうことは早い方がいい。明日絶対にきけ!」


「無理無理無理無理」



俺の肩をつかんで諭してくる郁也の手を、全力で押し返す。



すると目の前の男は、焦る俺を一瞬睨んで大きく息を吸った。



「だーぁかーぁら、お前はヘタレなんだよ!
いいか、好きな女の子にアピールをしまくってこそ真の男だ!!
普通お前みたいなうじうじした男、成海サンみたいな女の子が相手にすると思うか!?
お前の言う通り、これは奇跡なんだ。そのチャンスを有効活用しなくてどうする!!
いつまでもヘタレ男でいたくなけりゃ、ここで勝負しろ!!」





………呆然。



耳がキーンとする。



罵声の勢いに圧倒されて半分くらい聞いていなかったけど、必死の顔の郁也にはそんなカミングアウトはできない。



「分かったか?」


「…は、はい」



…聞こえた部分のお言葉だけ、ありがたく受けとっておこう。