「瑞樹の気持ちに気付かない成海サンも、瑞樹の気持ちを知っていて邪魔する兄貴も、マジでムカつく!」


そう言ってクッと喉を鳴らし、握った拳を自分の太ももに叩きつける郁也。



…成海さんが鈍感なことに罪はないと思うけど…



好感を持てないと、そんなことまで憎くなるのか。




「瑞樹が今どんな気持ちでいるか考えろよ…!」



え……?



続けた郁也の言葉が、俺の胸をついた。




…郁也…



俺のために泣いてくれているんだ…



俺の代わりに、悔しがってくれているんだ…





俯いたままの頬にははっきりとした涙筋。



こんなに泣く郁也は初めて見た。



正直、驚きでいっぱいだ。