「おめでとうとか言った?」


「ううん」


「は?何でだよ?」


「何でって何が?」


「何で言わないんだ?」


「何で言わないといけないんだ?」


「……」



何で何での繰り返し。



淡々と返す俺の言葉に、郁也はぽかんとしている。



「…一体どういう心変わりだよ」



理解できないと言わんばかりの呆れ口調。



「別に心変わりなんてしてないよ。ただ、俺が言う必要はないかと思っただけ」



そう言って俺は開きっぱなしの問題集に視線を戻した。



「…ちょっと。…マジでよく分かんねぇんだけど」



説明しろ、と催促の視線が、郁也の方から見なくても感じる。