「郁也、何でここにいんの?」 「宿題見せてもらおうと思って」 「…またか」 郁也の“宿題見せろ”は、毎年恒例。 長期休みに数学や国語の問題集の宿題が出る度に、俺の答えを写す。 「連絡してこいよ」 「どうせお前は暇だろ。連絡しなくたって家にいることは分かる」 郁也がふっと笑って言った。 …それに言い返せる言葉は、俺にはない。 「……もういいよ。上がって」 「お邪魔しまーす」 草引きの手を止めて、郁也を連れて家に入った。