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体が溶けてしまいそうなくらいに暑い8月下旬。



昨日この街に引っ越してきたばかりのわたしはたった今、秋から通う学校へ挨拶に行ってきた。



大きくてきれいな校舎の、私立小桜高校。



夏休み中で生徒はほとんどいなかったけど、いい雰囲気で明るい学校だった。



秋からが楽しみ。



クラスのみんなと、早く馴染めるといいな。




…それにしても暑いなぁ…



早く家に帰って休みたい。





なんて思いながら学校の前にある停留所に立っていると、曲がり角からバスの姿が見えた。



入口に踏み込んだ途端、涼しい風が火照った体を通り抜ける。



真新しい学生証を運転手さん見せて奥に進むと、茶色い髪の男の人が1人、前から3列目の席に座っていた。



がらがらの車内を適当に歩き、その人より2つ斜め後ろの席に座る。




夏の暑さで疲れきったわたしは、数分の記憶の末、いつの間にか違う世界に行ってしまっていた。