だんだん離れていく。
振り返り際にまた一瞬だけ微笑んでくれたあの表情が、俺の目に焼き付いている。
……どうしてキミはそんなに、俺の心をかき乱すんだ…
何で無理に笑ったりするんだ…
名前も知らなかったただ見つめるだけだった人が、いきなり目の前に現れて、しかも友達の知り合いだったなんて、動揺しないわけがないよ。
ほとんどなかった希望がほんのわずかでも見えたことに、素直に喜んでもいいのに…
俺に気遣う意味は、何…?
いてもたってもいられなくて、踏み出した。
前を行く小さな影に向かって走る。
「…成海さん…っ!」
たった数秒で彼女の背中に追いつき、腕を伸ばした。


