「…沢……有沢…有沢黒…有沢黒……」



「おいっ!黒起きろって!イワシ怒ってっぞ!」
俺のヘッドホンをとり、体を揺さぶるのは短髪のブラウンヘアの裕次郎

その声に目をさました俺はあたりをまだ冴えない頭のまま見渡す

あぁ。棒チョコ食べてぇなぁ。


ふと、右隣の席をみると裕次郎が何か言いたそうな顔でこっちをみていた。




うん?
あぁ。授業中か…



髪の毛をやたらセットさせたイワシが口元をピクピクさせながら俺を見ている



「俺の授業で寝るなどさぞ数学ができるのだろう。有沢、この問題を解いてみろ。」
と胡散臭い笑顔で言ってくる。



棒チョコ食べたいなぁ…。


「おいっ有沢っお前はこんな問題も解けないのか?」
とイワシは、あの胡散臭い笑顔を絶賛継続中だ。



うーん…ポケットに棒チョコ入ってなかったっけな…

そうして、俺は制服のポケットを探る。
すると、左の胸ポケットにくまの棒チョコが入っていた。



棒チョコが見つかったこととそれがくまだったことに上機嫌になった俺はイワシの問題を眺めてみた。



もちろんくまさんを舐めながら



「有沢。やっぱりお前には無理だな。俺の自信作だしな。」
とまたもや笑顔。すてきな笑顔ありがとうだ。



「おいっ。黒っ。お前チョコ食ってねぇでちゃんとイワシに一泡吹かせてこいよ。」
と裕次郎が鼻息荒く言ってくる。



うーん…チョコうまいし、行こっかな。



「裕次郎。ヘッドホン返して。」


「あぁ。ごめんごめん。」


裕次郎から返してもらったヘッドホンを装着してウォークマンに電源をいれる。


がっつりな曲にしよ…



ふぅーめんどくささをため息にこめると席を立ちゆっくりと黒板へと向かう。