教室で二人きりで向き合う兆志と還騎。

「…どこで知ったのか知りませんが…」

兆志は小さく溜息をついた。

「今では僕は歯牙ない天神学園の一教師に過ぎませんよ?還騎さんが何を期待しているかは知りませんが、僕には貴女を満足させるような力はありません」

「それは嘘でしょう、因幡先生」

還騎の口角がつり上がる。

「死神の世界で地区長とは、相当な実力者だけに任せられる役職…特にこの天神学園の存在する天神地区は、昔から優秀な死神のみが地区長に任命される、いわば出世コース」

スッと。

衣擦れの音すらさせずに還騎が立ち上がった。

「如何に現役を退いたとはいえ、元地区長の死神であった因幡先生が力無き存在だなどと…とても信じられませんね」