だって、先生が笑いながらこっちに向かって手を振ってきたから。
隣にいる女の人も小さく手を振ってくれている。


そのことだけで、一気に涙が引っ込んだ。

あたしって単純。


先生、ちゃんとあたしだってわかってくれてるのかな。

女の人も優しい人だ。
見ず知らずの女子生徒なんかに手を振ってくれて。



先生とあの人、きっとお似合いだな。

ほんとにそう思った。


『諦めなきゃだなぁ』

そう呟いた声は、美術室に小さく響いた。