四月の始めの、入学式。


学校の有名な桜が満開に咲いてあたしたちを迎える。

退屈な式が終わって教室へ向かう途中。

廊下に飾ってあった絵に惹かれたあたしは、一人立ち止まりその絵を見上げた。


すごく繊細で、素敵な絵。

大きな桜の木と、その横に流れる川が描かれている。


『きれい…』

それが、あたしの素直な気持ちだった。



「それ、俺が描いたんだ」

小さく呟いた声に対して、後ろから聞こえてきた返答。


ふと後ろを振り向くと、先生とは思えない若い男性が笑顔であたしを見ていた。


「この学校の美術室から見える景色。
俺の一番好きな場所なんだよ」


とてもうれしそうに。
楽しそうに話す先生に、あたしは会った瞬間から惹かれていった。


この絵と同じで、先生の笑顔はとても色鮮やかな気がした。




これが、あたしと先生の初めての出会いだった。