『美術の先生にあげれるほど、上手じゃないよ』


あんな綺麗な絵を描く先生に
あたしの絵なんか送れない。

それに、あたしは美術選択者の中でも絵が上手なほうではないし。

そんなの無理に決まってる。


「えぇ~、あたしは絵美の描いた絵大好きなのにな~」

ふてくされたように言う沙希に
『あはは、ありがとうっ』
と言って弁当を片付ける。


「先生、絶対喜ぶと思うんだけどなぁ」


沙希はまだあたしの隣でぶつぶつ言っている。

でも、絵じゃないものなら
何をあげればいいんだろう。


頭をひねって考えてみるけど
全く思い浮かばない。

どうしても、沙希の言っていた“絵”しかでてこない。


…ちょっと、描くだけ描いてみようかな。
あげるかあげないかは、その絵の出来次第で。



あたしはそう決めて、カバンの中に弁当を突っ込んだ。