聞き間違いでなければ、捕虜と言われた気がする。

脱走した捕虜だと。

一体なんの話をされているのだろう。

次から次へと頭で整理できないうちに思考を乱される。

武装した集団が近付いてきても恐怖感はなかった。

それに勝る未解決な事が多過ぎるのだ。

こんな服装の集団なんて見たことがない。

その時点で捕虜だと言われてもおかしいではないか。

「お前達を拘束する。脱走を謀った罪は重いぞ。」

また分からない事が増え、シイラは更に混乱してしまった。

目は泳ぎながら自然と俯いていく。

まるで地に足がついていない不思議な感覚さえ生まれてきた。

頭の芯が振れている気がする。

黙ったまま動かないシイラの様子に、抵抗する意思はないとみた兵士達は確保に動いた。

武器を納め、拘束用の縄を手にした2人がシイラに近付いていく。

「その子に手を出すな!」

オーハルの叫びが風を切り裂くように響いた。