ドワーフは命絶える時その痕跡すらも亡くすという話を昔聞いたことがある。

それが自然に還るということ。

そうでなくてもシイラの身体に流れる血が知っていた。

それはこの世の神秘なのかもしれない。


岩の妖精であるドワーフは神様に創られた尊い存在、命ある時にだけ存在する特別な物。

命果てた時は無に帰すだけ。

有を越えた無になるのだ。

しかし彼はそうでなくもシイラにとっては特別だった。

「頑張る。」

そう呟いて涙をぬぐった。

もう、これが最期なのだ。

この土もやがて消える、涙を流すのもダイドンに触れるのも、これが最期になる。

“繋げ”

ダイドンの言葉が頭に浮かんでシイラを前と押してくれた。

「繋げ。」

気持ちが落ち着き始めたら傍を流れる川のせせらぎが耳に心地よく響いてきた。