手を繋がれて歩いていくと
段々と濃くなっていく潮の香り


見えてきたのが大きな船だったから
どうやら私が予想していた浜辺ではなくて、港の方へ来たらしい


「うわっ!大きな船だねぇ~!」

真っ黒でところどころにセンスのいい装飾が輝くそれは
どうもただの貨物船には見えなかった


『あー、イオンの船だなありゃ
ちょっと寄っていい?』

「え…いいけど…?」


一体刹那はこの街に何人の知り合いがいるんだろうか?

さっきも友達がどうたら言っていたし…



そう言うなり、そっちの船の方向へ歩き始めた

…ちょっと怖いんだけどなぁー

だって、見るからにいかつい人たちが積荷を移動させているし

あそこに見える人が持ってるのって本物の刀っぽいし…


「でも、そんな事いえましぇん」

『あ?なんか言ったか?』

「…なんでもない」


不安な気持ちを紛らわせるために
刹那の手を心持ち強めに握った



『ねぇねぇ、お前』

お前て、初対面の人間にお前て…


『あん?』


ほらー!見るからに機嫌悪そうじゃない!
“何話しかけてんだよ兄ちゃん”みたいな雰囲気じゃない~!



『“イオン総帥”に伝言、“黒翼の牙が船の外にいる”って伝えてくれ』

何故かその言葉を言うなり
その男の人の表情が変わり、すっと背を伸ばして小さく敬礼をすると船の中へと入っていった


…なんかよく分かんないけど

暗号?


「刹那…さっきの何?」


さっきの人の喧嘩腰の態度が急に変わるなんて
イオンって人、只者じゃなさそう


総帥って言ってたし、恰幅のいいひげもじゃのドンみたいなおじさんなのかな…?