私は、高校生だった。
相手は、社会人だった。


振りかえった瞬間、恋が始まった。



高校3年生になって、まだ一週間くらいの時。
私の住むところは、まだ桜が咲いていた。
自宅から、電車で大体30分くらいの高等学校に通う
私こと桜井あかねは、恋に奥手な女子高生だった。

誰かのことを好きだと思ってもなかなか積極的になれず、長引いた純愛は新学期になり、クラスが変わるとともに終わりを告げる。
その繰り返しだった。

だから、誰かと付き合ったりすることに、興味というか憧れのようなものがあった。

ましてや、もう高校3年生18歳だ。
彼氏がいないと、周りにおいていかれてるような気がして焦っていた。

だからといって、簡単に誰かと出会えるわけもない・・・

相手から話しかけてくれれば・・・。
私も積極的になれるかもしれないのに・・・。

そう思いながら、何かに期待しながら。
平凡すぎる毎日を過ごしていた。

例によって、今日も平凡すぎる日だった。

夕日が沈む時までは。

今日は、日曜日。
新クラスの友達とみんなで、カラオケに行っていた。
同じ方向に帰る人がいないので、1人で電車で帰っている。
前の席に、仲のよさそうな年の近いカップルを見つけた。

いいなぁ、幸せそうで。

コソコソふたりで話す姿すら愛らしい。
笑顔で、幸せそうで。
どうして、あの二人はうまくいくのに私はうまくいかないんだろう。

電車が、乗り換えの駅に着いた。
駅に降りてホームを歩く。
階段を上って、降りて隣のホームへ行く。
次の電車が来るまであと10分くらい時間がある。

音楽でも聞こうかな・・・

そう思い、ベンチに座った。

その瞬間だった。

「ねえ、ちょっといい?」


・・・え?

後ろから、誰かが話しかけてきた。
振りかえると、そこにはスーツ姿の男性が立っていた。

「あ、私ですか?」

第一声はそれだった。

「うん」

男性は答えた。

「このあと・・・さ。
予定なかったら、一緒にお茶でもしない??」

「・・・へ?」

これって・・・
俗にいう・・・

「ナンパ!?!?!」

あかねはホームで大声を出していた。