私は、高校生だった。
相手は、社会人だった。
振りかえった瞬間、恋が始まった。
☆
高校3年生になって、まだ一週間くらいの時。
私の住むところは、まだ桜が咲いていた。
自宅から、電車で大体30分くらいの高等学校に通う
私こと桜井あかねは、恋に奥手な女子高生だった。
誰かのことを好きだと思ってもなかなか積極的になれず、長引いた純愛は新学期になり、クラスが変わるとともに終わりを告げる。
その繰り返しだった。
だから、誰かと付き合ったりすることに、興味というか憧れのようなものがあった。
ましてや、もう高校3年生18歳だ。
彼氏がいないと、周りにおいていかれてるような気がして焦っていた。
だからといって、簡単に誰かと出会えるわけもない・・・
相手から話しかけてくれれば・・・。
私も積極的になれるかもしれないのに・・・。
そう思いながら、何かに期待しながら。
平凡すぎる毎日を過ごしていた。
例によって、今日も平凡すぎる日だった。
夕日が沈む時までは。
今日は、日曜日。
新クラスの友達とみんなで、カラオケに行っていた。
同じ方向に帰る人がいないので、1人で電車で帰っている。
前の席に、仲のよさそうな年の近いカップルを見つけた。
いいなぁ、幸せそうで。
コソコソふたりで話す姿すら愛らしい。
笑顔で、幸せそうで。
どうして、あの二人はうまくいくのに私はうまくいかないんだろう。
電車が、乗り換えの駅に着いた。
駅に降りてホームを歩く。
階段を上って、降りて隣のホームへ行く。
次の電車が来るまであと10分くらい時間がある。
音楽でも聞こうかな・・・
そう思い、ベンチに座った。
その瞬間だった。
「ねえ、ちょっといい?」
・・・え?
後ろから、誰かが話しかけてきた。
振りかえると、そこにはスーツ姿の男性が立っていた。
「あ、私ですか?」
第一声はそれだった。
「うん」
男性は答えた。
「このあと・・・さ。
予定なかったら、一緒にお茶でもしない??」
「・・・へ?」
これって・・・
俗にいう・・・
「ナンパ!?!?!」
あかねはホームで大声を出していた。