繋がれた糸 (短編)




あたしの好き時間が終わりを告げる。


亮輔が電話に出たら
現実に戻る。



あたしは布団を深く被り
亮輔に背を向けた。


涙が出そうで必死で我慢する。



「はい」


何事もなかったかのような亮輔。



「もうすぐ帰るよ」


こんな優しい口調の亮輔
あたしは知らない。



「ああ。じゃあな」



電話を切る亮輔の気配が
あたしの背中に突き刺さる。




もう、何の言葉もいらないから
あたしの嫌いな亮輔を見せないで……



だけど、その願いは形にはならなかった。





「実沙季…」



さっきの亮輔と違う
弱々しい声。


あたしの肩に亮輔の腕が伸びてきて
耳元のすぐ近くに亮輔の顔が近づいてきた。




「わりぃ……今日はもう帰らねぇと」



亮輔はいつもそう。


愛しい人が待つ家に帰ろうとする。




あたしよりも、その人が大事だから。