「あいつ、あのルックスでしょ? とにかく昔からやたらにモテたんだよ。聖夜自身は自分の外見に寄ってくるミーハーな女どもは全く相手しないどころか、ウザがってたよ」

「...へええ」

「オレのほうが2コ上だけど、あいつのことは高校から知ってたんだ。ツラがいいってんで有名だったからね。でも、大学時代の後半からかなあ...『俺の価値はカオだけか!? 俺は中身空っぽだってのかよ?』とかっつって、わざと汚ねえ恰好するようになったんだよ」


 ふえええ...。

 そんなにソーゼツにモテちゃうものなんだ、彼ほどの美形になると。

 お気の毒というか、羨ましいというか、目の保養というか?




 確かに、昼間までの聖夜さんはコキタナイ兄ちゃんだった。

 たった数時間でアイドル顔負けの王子様みたいに大変貌を遂げてしまって、私なんかは気後れしちゃってたまらない。

 実は、ホテルで再会してからまともに聖夜さんの顔を見ることが出来ないでいる。

 余りにも綺麗すぎて。

 キレイ過ぎてなんだか近寄りがたいのよ、平凡を絵に描いたような私には。

 王子様ヴァージョンの聖夜さんの隣には、テレビに出てくるような美しい女性が立つのが相応しいような気がして。

 私が好きになってはいけないひとのように思えてしまうの。



 それに。

 フェリーで初めて逢ったあの姿の方が、聖夜さんの温かい人柄が滲み出ているような気がするんだけれどね?







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