きちんと“教師”を語っているのは、短くカットされた、その長さだけ。

いつだってココにくると、先生は音を鳴らしてる。


「もう、とっくに壊れてるのに」


役目を終えた、このおんぼろピアノで。





「…おいで、霧山(きりやま)」


泣きたくなんかないのに、泣きたくなって。


こみ上げてくるものに侵されてしまいそうになる私に、オトナのフリをして、右手を差し出す先生。



ー… 霞 緒斗(かすみ おと)


先生が、左手じゃなく右手を差し出した理由も、オトナのフリをする理由も、一向に私の名前を呼ばない理由も。

考えなくたって、十分すぎるほどに分かっているけれど。


分かっているから、その手に自分を重ねた。



「今日は髪の毛、下ろしてるんだ」


…いつまで、私達はこうしているんだろう。