☆続☆恋する*spring〜春をうられたわたし〜 【完結】




「そうだな。
早く言って安心させたい」



ボソッと呟いた翡翠。
普段より小さい声だったけど、わたしの耳にはしっかりと入って来た。



それに……

すごく幸せそうな、嬉しそうな顔をしてる………






そんなに大切なの………?結婚相手のこと………




そうなら………
なんでここにいるの……?

早く…早く……




「早く行ってよ!!」




「ああ、そうする」





少し笑みを含んだ声で翡翠は言い、クルリっと体の向きを変え、扉の方へ歩きだした。







その姿から目を背けたくて、わたしも翡翠に背を向けて俯いた。





翡翠…………




ひすい………








―――ぱたん



扉の閉まる音が静かな部屋に響いた。




「っ…………すい……っく…ひ、すい………い、行かない、で………」





もう今更、名前を呼んでも、引き止めても遅い。





もう、翡翠の耳には届かない。