「あの…………お母さんはどうしてこの家を出て、神奈川に?」
これは、わたしが一番知りたかったこと。
お母さんはお金持ちだから、二人は……………
「それは…………」
結治さんは一瞬固まり、決心したようにまた口を開いた。
「私と綾子の婚約が決まった時、まだ姉さんは独身だった。
見兼ねた父が、お見合いをさせようとしたんだが…………姉さんは"付き合っている人がいる"と言って、お見合いを断った」
結治さんの会社はすごく有名。
だから、お母さんのお父さん、わたしのおじいちゃんはそれなりの地位のある会社のご子息と結婚をさせたかったのかもしれない。
「"一度会って欲しい"と姉さんが家に連れて来たのは、嘉春清重という男だった。
珠莉ちゃんの父親だ。
姉さんは清重さんと結婚したい、と父に言ったけど、普通の家、仕事も普通のサラリーマンだった珠莉ちゃんの父親を認めなかった」



