「黒崎社長!」
誰かが翡翠の名前を呼んだ。
翡翠の後ろの方から聞こえたけど、翡翠で見えない。
わかるのは、男の人っていうことだけだ。
その声を聞き、翡翠は誰の声なのか分かったみたいで強張った顔をしてわたしを抱きしめていた腕を解いた。
「どうしたの?」
いつもなら誰が来ても離してくれないのに。それに…………翡翠の表情……………
「いや………ちょっと……珠莉に会わせたい人が向こうから来た」
気になって聞いてみると、そう答えた翡翠。
翡翠が緊張するような人なの?
背の高い翡翠が目の前にいるので、いまだに翡翠を呼んだ人がわからない。
気になって少し横に顔を出して見てみた。
すると、翡翠を呼んだらしい男の人と他に2人、女の人がいた。



