少しだけ、冷静になることが出来た。
「すみません。
取り乱してしまって」
俺はまたソファに戻った。
「それより、何があったんだ?」
「珠莉は…………上野会社の一人娘に連れ去られました」
さっきの電話の相手は由香だ。
由香は、上野会社の一人娘。
「どういうことだ?」
「上野会社の一人娘と俺は昔、交際をしていました。
今は何も関係ないのですが、最近また交際を申し込まれて…………
でも、今は珠莉と交際しているので、出来ないと、断りました。
けれど、それでも言い寄ってきて…………
俺がダメなら珠莉から別れさせようとして連れ去ったんだと思います。
……………こうなったのは、俺の責任です。
すみません」
俺は頭を下げた。
「頭を上げて下さい。
だいたいのことはわかりました。
けれど、今はそんなことより、あの娘を見つけて連れ出すことが先決です」



