固まって動かない男から珠莉の腕を引っ張り、腕の中に納めた。
「社長のお知り合いですか?」
「そうだ。
もういいから行け」
「は、はい。
失礼しました」
男は慌てたように去って行った。
「珠莉大丈夫?許可証は?」
今まで黙って見ていた紺野が心配そうに聞いた。
「多分、社長室………」
やっぱり………思った通りだ。
何やってんだよ……本当に。
「行くぞ」
呆れながらも珠莉の手を握りしめ、歩き始めた。
珠莉とちゃんと話そう。
そう心に決めて。
会議室に入った瞬間、珠莉を抱きしめた。
「珠莉……ごめん。
俺は、言ってはいけないことを言ってしまった……
ごめん」
そう言って抱きしめる力を強めた。
「本当は嬉しかったんだ。
俺のために働いてプレゼントを買ってくれた事……」
こんなこと言っても傷付けたことには変わりないけど。
「わたしも……ごめんなさい。
隠し事しないって約束したのに……隠し事しちゃった……」
「それは……許したくないけど……珠莉が無事だったんならいい」
"何もなくてよかった"
珠莉が無事でよかった。



