ヴーヴーッ




いきなり唸るような音がして
あたしの肩がびくっとした。

体勢と近さはかわりないけど
ぴんとはった緊張と冷たい空気が
少しゆるくなった。



「…」

「…」



ヴーヴーッ…ヴーヴーッ…



「…八代、携帯」

「…」

「ねえっ八代っ!」

なかなか電話に出ない八代に
しびれを切らせて少し怒鳴った。

「…っあ゙あくそっ」


イラついた様子でポケットから携帯をとりだす八代。

可能な限り、奴から離れた。



…手、離してよ



なんて、言えない。
こわくて言えない。



「なに?」

〈……〉

「うん、」

〈………〉

「無理」

〈……〉

「チッ」

最後、舌打ちして電話を一方的に切った奴



だから、こええよ………