朝の教室
電車で10分のトナリ町の高校に入学して三ヶ月がたった
制服にはまだ着られてる感がぬぐえないけど、慣れない電車通学は楽しい。
同じ中学出身の友人は始発には乗らない。
群れることが苦手な私は、友人と言ってもつかず離れず距離を保っている。
一人は苦じゃない。
むしろ、一人でいることが好きだった。
ひとり始発に乗って、朝いちばんに登校して、
教室を独占するこの時間が好きだった。
昼間は雑音でいっぱいの教室は
別世界のように静かで
昼間の明るすぎる日差しは
やわらかい朝の光で満ちて
昼間の人くさい雰囲気は
すがすがしい凛とした空気に変わって
一人だけだとこんなにも違うものだと、
自分だけが知っているこの場所が好きだった。
だけど、至福のひと時は長くは続かない。
邪魔者の登場で、世界は遮断される。
泡のように消えて、喧騒に沈んでいく。
