「あの日…。海で出会った前の日、彼と別れたの。彼とはずっと不倫で、でも結婚出来ると思ってた。そうしたらあの夜、別れ話になって、嫌だって言ったんだけど、全然聞いてくれなくて。歩いてたら海にでて、ああ、海っていいなと思って歩いてたら、少しずつ入っていったみたいで…。そうしたらあなたが来て…。」
「もういいよ!もういい…。でもじゃあ何で俺と暮らしたんだよ。そんな必要ないじゃないか。」
「それは…。」
“海”が息をつく。
「ともかく今までありがとう。とても楽しかった。じゃあこれを…。」
封筒を差し出す。
「何だよ、これ。」
「ここにいた間のお金。足りないかも知れないけど許してね。今はこれくらいしかないから。」
「そんなの要らねえよ。」
「いいから貰って。ほんの気持ちだから。」
「いいよ。」
「いいから…、ね。」
と押し付けてくる。
「もう行くね。彼が待ってるから。」
「彼って…。」
「あなたも会ってるわよ、毎朝。」
!!
あの男!
偉そうに、俺に毎日説教してた嫌な男!
「あいつが…彼…。」
「そう。あの日別れ話しした人。あなたにはイヤな人かもしれないけど、本当は良い人なのよ。その彼と寄りを戻したの。」
「…あなたのおかげよ」