その夜、チャイムが鳴る。
こんな時間に誰だろう。
「“海”…。」
「久し振り。遅い時間にごめんなさい。ちょっと引き止められてたから。…上がってもいい?」
「ああ…。」
本当に“海”なのか…。
幻でも見てるんじゃないか。
「今日はごめんなさい。もう会わない方がいいかと思って、頼んだんだけど、こんなことになるなんて…。怪我しなかった?」
「怪我したのは向こうだよ。それより、もう会わないって…。」
「うん…。突然でて行って、突然こんなこと言うなんて、酷いと思うけど…。もう終わりにしましょう。」
「待ってよ。意味がわかんないよ。何で終わりだなんて言うんだ。何が原因なんだよ。何でいつもそうなんだよ。突然居なくなったり、現れたり。今度は突然別れる?終わり?何なんだよ。」
「怒ってる?当然よね。一方的だもんね。でも、ごめんなさい。気持ちは変わらないから。」
「何でだよ。何で別れなきゃならないんだよ。俺が何したよ。」
「うん、何も悪くない。私が悪いだけ。」
その後も別れたい、嫌だの繰り返し。
「何でだよ。ハッキリ言ってくれよ。じゃなきゃ何も終わらないだろ。」
黙り込む“海”。
「何だよ。言えよ。」
「言えよ。」