「試してみるがよかろう? だが『青龍』はともかく、『白虎』の鬼を一対一で倒せるのは勇者のみだ。覚えておくがよい」
「閣下。遊馬の血統三人の中に勇者がいる可能性はありませぬか? 奴らの誰かが剣を抜き……」
勇者の存在を信じていない狩野にとって、単に『鬼の剣を操れるもの』といった意味で尋ねた。
すると、クッと仮面の奥から失笑が聞こえた。
「先代宗主が鬼になる様を目の当たりにしたのだ。奴らに、神剣を抜く勇気などありはせん。だからこそ、一矢を探している。だが、遊馬の娘は生かしておいてもよいな。四天王家の血統を残す花嫁が必要だ」
仮面の男は立ち上がると、再び窓の前に立ち、城下を見下ろした。
吹き込む初夏の風は、この高さまで来るとさすがに強く、心地よい。邪魔な仮面など、すぐに剥いでしまいたいところだ。
だが、まだ早い。この顔を人前に晒す時期ではない。そんな思いを巡らせつつ、男は無造作に壁に掛けられた神剣『朱雀』の鞘に手を添えた。
瞬間、男の手は小刻み震え、さも嬉しげに喉の奥を鳴らすのだった。
「閣下。遊馬の血統三人の中に勇者がいる可能性はありませぬか? 奴らの誰かが剣を抜き……」
勇者の存在を信じていない狩野にとって、単に『鬼の剣を操れるもの』といった意味で尋ねた。
すると、クッと仮面の奥から失笑が聞こえた。
「先代宗主が鬼になる様を目の当たりにしたのだ。奴らに、神剣を抜く勇気などありはせん。だからこそ、一矢を探している。だが、遊馬の娘は生かしておいてもよいな。四天王家の血統を残す花嫁が必要だ」
仮面の男は立ち上がると、再び窓の前に立ち、城下を見下ろした。
吹き込む初夏の風は、この高さまで来るとさすがに強く、心地よい。邪魔な仮面など、すぐに剥いでしまいたいところだ。
だが、まだ早い。この顔を人前に晒す時期ではない。そんな思いを巡らせつつ、男は無造作に壁に掛けられた神剣『朱雀』の鞘に手を添えた。
瞬間、男の手は小刻み震え、さも嬉しげに喉の奥を鳴らすのだった。

