弓月は腰を落とした低い体勢から――すれ違い様『青龍』を抜き放つ。

そして、鬼の左脇腹を切り裂いた。だが、鬼はこれでは止まらない。弓月はそのことを狩野との戦いで学んでいた。

抜剣した『青龍一の剣』を振り切らず、すぐ様、太刀を返す。

平正眼(ひらせいがん)の位置から、寝かせた刃を水平に薙ぎ払い、弓月は敵兵の利き腕を落とした。


『朱雀』の支配を失った鬼は、その場に崩れるように倒れる。

絶命しているのは、火を見るよりも明らかだった。


弓月の周囲に青き風が舞う。


それは、乙矢の力を得て輝きを放った『青龍』よりごく自然に――蒼々たる様を誇示していた。


――我は『青龍』。我が主にこの力の全てを与えよう。我が半身と共に。


弓月の内にも風が吹き荒れていた。

だが、『朱雀』の時のように、胸の真実を燃やし尽くすような痛みはない。『青龍』から流れ込む、水とも風とも取れるものが、体内を縦横無尽に駆け巡っている。

それは弓月にとって、心地よい感覚だった。