その時、ザッと後方の茂みが動く。

陽炎のように立ち昇るあからさまな殺意に、弓月らは一斉に振り返った。


「何奴だっ?」


長瀬が叫び、同時に弓月を背に庇う。

凪は短く弥太吉の名を呼び、手元に引き寄せた。


弥太吉の父、小弥太は凪の親友だった。子を持てぬ凪にとって、亡き親友の息子なら我が子も同然。弥太吉が罠に嵌められたのなら、責任は自分にある。何をおいても、一矢の魔の手から少年を守らねばならない。

凪はその気持ちを新たにするが……。


茂みから現れたのは、凪たちが想像もしていない男だった。