一矢の言葉に、慌てて新蔵らが乙矢の部屋に駆け込む。しかし……そこはもぬけの空。里中を探しても乙矢の姿はなく。一矢はその報告を受けると、沈痛な面持ちで呟いた。


「やはり、そうだったのか……」

「どういうことです? やはり、とは、どういう意味ですか!?」


弓月の問いに、一矢に代わって長瀬が答えた。


「姫……そこのおきみは、一矢様の顔を見たと言った。そして、この里から乙矢の姿が消えた。それが意味するものは……」


言葉の意味を悟った瞬間、弓月は叫ぶ。


「馬鹿を申すなっ! 乙矢殿が何ゆえ『青龍』を奪う? あの乙矢殿が……罪もない里人を殺すと思うのか?」

「しかし、実際に、奴は何処にもいないんですよ! 神剣を奪い、見つかる前に逃げたんだ。あいつはやっぱり、裏切り者だったんだ!」

「新蔵……」


弓月は新蔵の剣幕に驚きを隠せない。

だいぶ歩み寄りを見せていたはずなのに、これではまるで、出会った当初に逆戻りだ。